在留資格2026.07.08監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

在留資格の基礎知識 — 転職前に知っておくべきこと

「いまの在留資格のまま、転職はできますか」。これは、転職を考え始めた方から最も多く受ける質問のひとつです。答えは「資格の種類による」としか言えないのですが、多くの方はこの「種類による」の中身を、正確には把握していません。曖昧なまま転職活動を進めてしまい、内定が出た後になって在留資格の壁に気づく——という展開は、決して珍しいものではないのです。

率直に言うと、在留資格の制度は複雑に見えます。ですが、転職の場面で本当に必要な知識は限られています。この記事では、出入国在留管理庁が公開している情報にもとづき、転職を考える際に押さえておくべき在留資格の基礎知識を整理します。

0. 前提 — 在留資格は「働ける範囲」を決めるパスポート

在留資格は、日本に住むための許可であると同時に、「どんな仕事に就けるか」を定める枠組みでもあります。観光ビザで働けないのと同じように、それぞれの在留資格には、対応する業務内容・業種の範囲が決められています。この範囲を超えた仕事に就くと、資格外活動にあたり、罰則の対象になる可能性もあります。

誤解がないように申し上げると、範囲が決まっているからといって、選択肢が極端に狭いわけではありません。多くの在留資格は、想像より広い範囲の職種をカバーしています。まずは正確な範囲を知ることが第一歩です。なお、この記事の内容は2026年7月時点の一般的な制度解説であり、制度は改正されることがあるため、最終判断は必ず最新の公的情報とあわせて確認してください。

1. 就労系の在留資格 — 代表的な3タイプ

就労のための在留資格の中でも、特に多くの方が該当するのは次の3タイプです。

特定技能は、人手不足が深刻な特定の産業分野(介護・建設・製造業・農業など)で就労するための資格です。1号は在留期間に上限があり家族帯同はできませんが、2号に移行すれば上限がなくなり、要件を満たせば家族帯同も可能になります。

技術・人文知識・国際業務は、いわゆる「就労ビザ」として最も広く使われている資格で、エンジニア・通訳・営業・企画など、専門性や大学等での専攻と関連する業務に従事する場合に該当します。転職の際は、転職先での業務内容がこの専門性の要件を満たしているかが審査のポイントになります。

技能実習は、母国への技能移転を目的とした制度で、就労そのものが目的の在留資格ではありません。技能実習から転職を考える場合は、まず特定技能などへの在留資格変更が前提になります。

2. 身分系の在留資格 — 就労制限がないタイプ

永住者・日本人の配偶者等・定住者などは、「身分または地位に基づく在留資格」と呼ばれ、就労の制限がありません。業種や職種を問わず、日本人と同じように自由に転職できます。これらの資格を持つ方にとって、転職活動は在留資格の壁を気にする必要のない、純粋なキャリア選択の問題になります。

ただし、身分系の資格であっても、更新のタイミングでの提出書類(納税状況や在留状況の証明など)には注意が必要です。転職直後で収入が不安定な時期に更新のタイミングが重なると、審査に影響することもあるため、更新時期と転職時期のバランスは意識しておくとよいでしょう。

3. 転職時の在留資格変更手続き — 何を、いつ、どこに

同じ在留資格の範囲内での転職(たとえば、エンジニアからエンジニアへの転職)であれば、原則として在留資格の変更手続きは不要です。ただし、転職先が決まったら、就労資格証明書の申請を行うことをおすすめします。これは義務ではありませんが、転職先の業務内容が在留資格の範囲内であることを事前に確認できる、いわば「お墨付き」のようなものです。

一方、業種や職種が大きく変わる転職(現場職から専門職へ、など)の場合は、在留資格の変更許可申請が必要になることがあります。この審査には一定の期間がかかるため、内定から入社までのスケジュールに、審査期間を織り込んでおく必要があります。

4. よくある誤解 — 「会社が変わっても資格は自動的に続く」わけではない

特定技能や技術・人文知識・国際業務の在留資格は、あくまで「その業務内容」に対して許可されているものであり、会社名に紐づいているわけではありません。そのため、会社が変わっても、業務内容が在留資格の範囲内であれば、資格自体は引き続き有効です。ただし、「会社が変われば自動的に何もしなくていい」というわけではなく、状況によっては届出や証明書の準備が必要になります。この点を誤解して、転職後に慌てて手続きをするケースも少なくありません。

また、退職から転職までの期間が空くと、「就労系の在留資格なのに働いていない期間」が生じます。この期間が長くなりすぎると、次回の在留資格更新に影響する可能性があるため、転職活動はできるだけ在職中から始めることをおすすめします。

5. 在留資格の「格」を上げるという考え方

比喩を使うなら、在留資格は「働ける道の広さ」を決める道路のようなものです。特定技能は指定分野という決まった車線を走る道路、技術・人文知識・国際業務はもう少し広い道路、身分系の資格は制限のない高速道路——というイメージです。多くの方にとって、キャリアの目標のひとつは、この道路をより広いものへと変えていくことにあります。

特定技能から特定技能2号へ、技術・人文知識・国際業務から高度専門職へ、そして永住者へ。それぞれのステップには要件があり、在留年数・専門性・年収・日本語力などが組み合わさって審査されます。一足飛びに最終ゴールを目指すのではなく、いま自分がどの道路にいて、次にどの道路を目指すのかを意識することが、遠回りを避けるコツです。

6. 家族の在留資格にも影響することを忘れない

配偶者や子どもを帯同している場合、あなたの在留資格の変更は、家族の在留資格(家族滞在など)にも影響します。転職によって在留資格の種類が変わる場合は、家族の在留資格の手続きも並行して必要になることがあります。この点を見落として、家族の在留期間の更新だけを別々に進めてしまい、後で整合性が取れなくなるケースもあるため、転職を考え始めた段階で、家族分もあわせて専門家に相談することをおすすめします。

7. 相談窓口を知っておく

在留資格に関する相談先は、思っている以上に多く存在します。出入国在留管理庁の窓口はもちろん、各自治体には外国人向けの相談窓口が設置されている場合が多く、多言語対応をしている自治体も増えています。また、行政書士の中には、在留資格の手続きを専門に扱う「入管業務専門」の事務所もあり、複雑なケースや急ぎの手続きが必要な場合は、こうした専門家に相談すると安心です。

費用の面で相談をためらう方もいますが、間違った手続きで在留資格を失うリスクと比べれば、専門家への相談費用は決して高い投資ではありません。特に、転職に伴う在留資格の変更のように、審査の可否がキャリアそのものに直結する場面では、早めに専門家の意見を聞いておくことをおすすめします。会社によっては、顧問の行政書士を紹介してくれるところもあるので、内定後の面談で確認してみるのもひとつの手です。

(結論)不安なときは専門家に確認する

在留資格の制度は、法改正によって変わることもあります。この記事で解説した内容は、2026年7月時点の一般的な整理であり、個別の状況によって判断が変わることもあります。少しでも不安がある場合は、行政書士や出入国在留管理庁の窓口など、公的な専門家に確認することを強くおすすめします。自己判断で進めてしまい、後から手続きのやり直しが必要になるケースは、決して珍しくありません。

在留資格の全体像を理解したうえで、次はご自身の状況に合ったキャリアの方向性を考えてみましょう。当メディアのキャリア方向性診断では、在留資格・日本語力・経験から、あなたに近いタイプを判定します。

付け加えると、在留資格の制度は「あなたを縛るためのもの」ではなく、「日本で安心して働き続けるための仕組み」でもあります。要件を満たしていないまま働き続けてしまうと、更新時に思わぬトラブルにつながることもあります。逆に、正しい手続きを踏んで積み重ねていけば、在留資格は着実に安定していきます。焦って近道を探すよりも、地道に正しい手順を踏むことが、結果的にいちばんの近道になるケースがほとんどです。

最後に、転職活動を始める前のチェックリストとして、次の3点を確認しておくことをおすすめします。ひとつ目は、現在の在留資格の種類と有効期限。ふたつ目は、転職先の業務内容が在留資格の範囲内かどうか。みっつ目は、在留資格の変更が必要な場合、審査期間を織り込んだスケジュールになっているかどうかです。この3点を押さえておけば、在留資格まわりで大きくつまずくことは少なくなるはずです。

皆さんいかがでしたでしょうか。制度は一度理解してしまえば、以降の判断がずっと楽になります。今日もがんばりましょう。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の内容は一般的な制度解説であり、個別の在留資格の判断は専門家にご確認ください。

この記事を、eBookで持ち帰る。 本記事をスライド形式のPDF(16:9・全13ページ)に再構成しました。お名前とメールのご登録だけで、その場でダウンロードできます。

あなたの在留資格でできることを診断で確認

15問で、あなたに合ったキャリアの方向性を判定します。

適性診断をやってみる → キャリア面談をする →

あわせて読む