全体像2026.07.08監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

日本での転職の全体像 — 在留資格・日本語力・経験の3つから考える

「転職したいんですが、何から始めればいいですか」。僕はこの質問を、日本で働く外国人の方から数えきれないほど受けてきました。求人サイトを開けば求人はたくさん出てきます。でも、自分がその求人に応募できるのかどうか、実は求人票を見ただけでは分からないことが多いのです。

率直に言うと、日本での転職活動は、日本人の転職活動とは前提がひとつ違います。それは「在留資格」という制度の枠組みが、応募できる仕事の範囲そのものを決めているという点です。日本語力がどれだけ高くても、在留資格が対応していなければ応募自体ができません。逆に、在留資格の範囲内であれば、日本語力や経験の積み上げ次第で選択肢はどんどん広がっていきます。

0. 前提 — 転職活動の前に整理すべきこと

誤解がないように申し上げると、「在留資格が難しいから諦めたほうがいい」と言いたいわけではありません。むしろ逆です。制度を正しく理解している人ほど、遠回りをせずに転職を進められます。多くの方が損をしているのは、能力が足りないからではなく、単純に「知らなかった」という理由からです。

この記事では、日本での転職活動を進めるうえで整理すべき3つの軸——在留資格・日本語力・経験——を、順番に解説していきます。すべて出入国在留管理庁が公開している公的情報にもとづいています。

1. 在留資格 — 何ができるかを最初に確認する

在留資格には大きく分けて「就労が制限される資格」と「就労に制限がない資格」があります。特定技能や技術・人文知識・国際業務といった資格は、指定された分野や職種の範囲でしか働けません。一方、永住者や日本人の配偶者等、定住者といった「身分に基づく在留資格」は、就労の制限がなく、日本人と同じように自由に転職できます。

ここで大事なのは、「今の在留資格で、次に応募したい仕事ができるか」を先に確認することです。せっかく良い求人を見つけても、在留資格が対応していなければ、まず在留資格の変更手続きから始める必要があります。この確認を後回しにして選考が進んでしまい、内定後に在留資格の壁にぶつかるケースを、僕は何度も見てきました。

特定技能で働いている方であれば、特定技能2号への移行によって在留期間の上限がなくなり、家族帯同も可能になります。技術・人文知識・国際業務で働いている方であれば、転職先の業務内容が「専門性」の要件を満たしているかどうかが焦点になります。まずは自分の在留資格の種類と、その資格でできることの範囲を、正確に把握することから始めてください。

2. 日本語力 — 「できる」ではなく「どの段階か」で考える

日本語力について、多くの方が「できる」か「できない」かの二択で考えがちです。しかし採用側は、もっと細かい段階であなたの日本語力を見ています。日常会話ができるレベル(おおよそN3程度)、仕事のメールや報告書が書けるレベル(N2程度)、会議で議論や交渉ができるレベル(N1程度)。この段階によって、評価される職種がまったく違ってきます。

正直に言うと、日本語力が上がれば上がるほど、選べる仕事の幅は広がります。ですが、「日本語ができないと転職できない」わけでもありません。現場職や技能職では、日常会話レベルの日本語力でも十分に評価される求人が数多くあります。大事なのは、自分の日本語力の段階を正確に把握し、その段階に合った求人から着実にステップアップしていくことです。

日本語力を測る指標としては、JLPT(日本語能力試験)が最も広く使われていますが、ビジネス日本語検定(BJTビジネス日本語能力テスト)のように、より実務的な日本語力を証明できる資格もあります。応募したい業界・職種によって、どちらが評価されやすいかは変わってきます。

3. 経験 — 母国と日本、両方の経験を言語化する

日本での転職活動において、多くの方が見落としがちなのが「母国での経験の翻訳」です。母国で積んできたキャリアや資格は、そのままでは日本の採用担当者に伝わらないことが少なくありません。専門用語や資格の名称、業務内容の粒度が、母国と日本とで異なるためです。

たとえば、母国で「プロジェクトマネージャー」として働いていた方が、日本の採用担当者に同じ肩書きだけを伝えても、具体的にどんな規模のプロジェクトを、どんな体制で、どんな役割で担当していたのかが伝わらなければ、正しく評価されません。日本での職務経歴書の書き方に合わせて、経験を数字と具体例で言語化する作業が必要になります。

比喩を使うなら、母国での経験は「別の通貨で貯めた貯金」のようなものです。それ自体に価値はありますが、日本という市場で使うためには、日本円に両替する作業——つまり日本の採用文化に合わせた言語化——が欠かせません。

4. 会社選び — 「外国人歓迎」の中身を見極める

求人票に「外国人歓迎」「外国人スタッフ活躍中」と書かれている会社は増えました。ですが、その中身は会社によって大きく違います。単に人手不足だから外国人でも良いという会社もあれば、外国人材の受け入れ体制を本気で整え、在留資格の更新サポートや日本語研修まで用意している会社もあります。

見極めるポイントは、面接や求人票の中に「サポートの具体性」があるかどうかです。「サポートします」という抽象的な言葉だけでなく、「入社後に行政書士と連携して在留資格の手続きをサポートする」「月1回の日本語研修がある」といった、実際の制度として説明できる会社は、外国人材の受け入れに慣れている可能性が高いといえます。逆に、質問しても曖昧な返答しか返ってこない会社は、受け入れ体制がまだ整っていない可能性があるため、入社後のギャップに注意が必要です。

また、同じ国出身の先輩社員が在籍しているかどうかも、判断材料のひとつになります。ただし、これも唯一の判断基準にはしないほうがいいでしょう。コミュニティのつながりだけで会社を選んでしまうと、実際の待遇や成長機会を見落としてしまうことがあるからです。

5. スケジュール感 — 転職活動にかかる期間の目安

日本での転職活動にかかる期間は、在留資格の変更が必要かどうかで大きく変わります。在留資格の変更が不要なケース(同じ在留資格の範囲内での転職)であれば、応募から入社まで1〜2ヶ月程度で進むことも珍しくありません。一方、在留資格の変更が必要なケースでは、内定後に入国管理局への申請と審査の期間が加わるため、2〜4ヶ月程度を見込んでおく必要があります(当メディア独自ガイドの目安であり、審査状況により変動します)。

この期間の違いを知らないまま転職活動を進めると、「そろそろ辞めよう」というタイミングと、実際に転職先が決まるタイミングにズレが生じてしまいます。特に在留資格の変更が必要な方は、余裕を持ったスケジュールで動き始めることをおすすめします。

(結論)3つの軸を掛け合わせて、現在地を知る

在留資格・日本語力・経験。この3つは、それぞれ独立した軸ではなく、掛け合わさることであなたの現在地を作っています。在留資格が就労制限のない永住者であっても、日本語力と経験の言語化が不十分であれば、市場価値は正しく伝わりません。逆に、日本語力が高くても、在留資格の範囲が狭ければ、応募できる求人自体が限られてしまいます。

まずはこの3つの軸で、自分がいまどこにいるのかを整理してみてください。当メディアのキャリア方向性診断は、まさにこの3つの軸を15の質問で棚卸しし、あなたに近いキャリアの方向性を5つのタイプで示すツールです。次に何をすべきかの手がかりになるはずです。

付け加えると、これら3つの軸は固定されたものではなく、時間をかければ動かせるものでもあります。在留資格は要件を満たせば上位の資格に移行できますし、日本語力は学習によって段階を上げられます。経験も、今の職場でどんな仕事に手を挙げるかによって、少しずつ厚みを増やしていけます。つまり「今の現在地」がそのまま「一生の現在地」になるわけではありません。1年後、3年後の現在地を意識しながら、今日できることから積み上げていく——それが、日本でのキャリアづくりの基本的な考え方です。

最後にもうひとつだけ。転職活動は一人で抱え込む必要はありません。在留資格の手続きは行政書士、日本語力の向上は日本語学校やオンライン教材、転職先探しはエージェントや当メディアのような専門情報源——それぞれに頼れる先があります。一人ですべてを調べようとすると、情報が古かったり、断片的だったりして、かえって遠回りになることもあります。正確な情報源に当たりながら、着実に前へ進めていってください。

皆さんいかがでしたでしょうか。制度は複雑に見えても、順番に整理すれば必ず自分の現在地は見えてきます。日本でのキャリアづくりに、今日もがんばりましょう。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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